傷つける。

眠剤をやめたから、ようやく目が覚めた。
ことばをそのまま受け入れることがどうしても出来ずに、自分の都合のいいように解釈しようとして、そうやって傷つかないようにしていたのだと思う。

「セックスは軽いものですよ」
それはつまり「セックスは軽いものですよ、セックスをする相手であるあなたのことを軽く考えてる」
そのままの意味だった。

わたしは快楽に流されやすい。快楽を与えてくれた相手を求めて、心の中にある本心を鈍らせていた。
快楽は、わたし自身が感じたものであり、相手が与えてくれたものではなかったのに。

求めていないことばをそのまま受け取ることは、苦しい。
でも、それが相手の思考するものであるのなら、受け入れなければいけない。
傷ついたなら、離れなければならない。

「大丈夫大丈夫、だいたいのことはだいたい大丈夫」なわけない。
わたしは傷ついた。ちゃんと傷ついたから、瘡蓋になり、そして再生した。
ちゃんと傷つかなければならなかった。

寒い冬の夜、足が冷たくて、お母さんの布団に入りあしあんかしたくてくっついたとき、大声で怒鳴られたこと、蹴飛ばされて痛かったこと。

小学校で配布されたプリント、先生の自己紹介欄が面白くて、お母さんに読んでもらおうと見せた時、興味ないねんと突き返されたこと。

日中、母がしょっちゅう家に連れて来るおじさんがいつも、決まってわたしの欲しいものを持ってくること。

あんたなんか生まへんかったらよかったと言われたこと。

自分なりの解釈をして、笑ってごまかす思考のくせがついてしまっていた。

ぜんぜん大丈夫じゃない。
わたしはとても傷ついた。わたしの海馬に傷をつけた。
ちゃんとわかるから、小さくても、おばさんになっても、頭が悪くても、黙っていても、耳せんをしてても、ちゃんとわかるから、

ことばがちゃんとわかるから、美しいことばがわかるから、悪いことばがわかるから、あなたが悪くないこともわかるから、

だから、わたしは傷ついたよ。ちゃんと傷ついたから、瘡蓋になり、そして再生した。