2014年、高野山内で暮らしていた。
その年、山内にはよく熊が出没した。
ちょうど蓮の花のように、八峰の山々に囲まれた盆地のような場所にあるこの町に熊が出没してもおかしくは無いと、高野山で生まれ育ったわけではない私は思ったのだけれど、例年には無いことのようだった。
その年、高野山ではトンネル工事が行われていた。山の中でダイナマイトが炸裂する日々、それもまた、熊が驚いて町に出てきても仕方のないことだと思った。
「ポエトリーリーディングマ」は、毎日熊のことを考えていた日々に制作した、熊による、熊が読む、熊のためのポエムです。
2025年、今年もまた各地で、町に熊が出没している。また私は、熊を着たくなっている。




























「くまの こどう」
くまの こどう どくどくと
どんぐり どんぐり どんぐり と
この みちを ゆく
くまの こどう どくどくと
どんぐり どんぐり どんぐり と
わたしのなかの どんぐりが
わたしを 歩かせる
くまの こどう どくどくと
どんぐり どんぐり どんぐり と
わたしのなかの ダイナマイトが
そこへ 進まなくてもいいという
方向へ 進ませる
ひとは いちどこわしてから つくるのです
こわしてなお
あらたなカタチをつくるのです
ダイナマイトをつかうのです
運命をかえて 天命をあたえるのです
トンネルをつくるのです
くまの こどう どくどくと
どんぐり どんぐり どんぐり と
くまはいつか トンネルを あるくのです
どんな道にせよ あるくことだけが
ただひとつの 意味なのであります
「くまを うつ」
くまを うつ
うつの くまを うつ
うつの りょうしが うつ
つまを なくした りょうしが うつ
つめを なくした くまを うつ
かみを うつ
うつつの かみを うつ
うつつの かみを りょうしが うつ
うつつの りょうしが うつ
つみを なした りょうしが うつ
いま このじきを うく
「無垢なくま」
無垢なくまがいる
無垢な、くまのほうは 向くな
と、
無垢な くまは言う
秋が深まり
うんと きびしい風が吹いて
山は あかくなる
まくな
なにも まくな
と、
無垢な くまは言う
はじめて 雪がふる あさ
くまは あなを ほる
ほるな
はるのくるまで ほるな
と、
無垢な くまは言う
この山には 漁師はいるが
獣医はいない
実に健康的ではないか
と、
無垢な くまは言う